Written by Ryo Takei
今回の注目ベンチャーの紹介はZeta Energyです。
Zeta Energyは、次世代二次電池として期待されている技術の1つであるリチウム硫黄電池(LiSB)を開発しています。
※取り扱い注意!こちらの情報の展開は社内限りです※
Zeta Energy
https://zetaenergy.com/
サービス/プロダクト概要
- リチウムイオン電池(LiB)よりもエネルギー密度が高く、かつ低コストで優れた安全性を特徴とするリチウム硫黄電池(LiSB)を提供
特徴・提供価値
- リチウム硫黄電池(LiSB)は、正極活物質に硫黄(S)、または硫黄化合物を用い、負極活物質に金属リチウム(Li)を使用した蓄電池であり、充放電は硫黄とリチウムの酸化還元反応で行われる。特徴の1つが高エネルギー密度を実現できる点であり、硫黄(S)は原子1個でリチウム(Li)原子2個を引き付けられる、もしくは電子2個を出すことができるため、理論上は既存のLiB(最大270Wh/kg)の約10倍の重量エネルギー密度(2500Wh/kg)を達成できる。ただし現実的には、2倍程度の重量エネルギーの実現を目標とした開発が各社で進められており、同社のLiSBは重量エネルギーは350Wh/kgを達成している。
- 硫黄(S)は地球上に豊富に存在し、化石燃料の精製や金属の精錬過程で分離された副産物として大量に生産されている。そのため、非常に安価に入手でき、安定的な供給が確保できる。また既存のLiBのカソードで使われているコバルトやニッケル、マンガンといった高価な金属材料が不要となるため、コストを低くできる。同社が使用する原材料は、米国内または欧州で入手・生産されている。
- LiBのアノードの炭素系材料には、一般的に黒鉛(グラファイト)がよく使用されるが、同社のアノードはリチウムで被覆された垂直配向カーボンナノチューブ(CNT)で作られる特徴的な構造を有する(下図)。この独自のCNTアノード構造は、触媒コーティングされた銅箔上に熱CVD法(約500℃)によって約数秒でCNTを成長させて形成でき、かつRtoRプロセスで製造することができる。このリチウム化された垂直配向CNT構造により、充放電の繰り返しに伴い発生するリチウムの析出(デンドライト)を抑制し、高エネルギー密度の維持が可能となっている。
- LiSBはサイクル寿命の短さが普及に向けた課題の1つと言われており、その原因はカソードの硫黄が電解液の溶出しやすいためである。しかし、近年この充放電サイクル寿命を大幅に伸ばした開発事例を各社発表しており、同社も硫黄の溶出を抑制し安定化させる炭素複合化技術により1500回以上のサイクル数を達成している。
ビジネスモデル
- 重量/容量あたりのエネルギー密度の高さにより航続距離が伸びることを活かした電気自動車(EV)への搭載、また電池の軽さを活かしたドローンや飛行体への搭載を想定したバッテリーの販売
なぜ今この会社なのか
- 現行LiBに替わる、より高性能で小型、高密度にエネルギーを貯められる次世代二次電池の開発が注目を集めており、そのうちの1つであるLiSBは、低コストと性能向上を同時に見込めることから近年開発例が増えている。
- LiBの関連部材や電池セルは、現在市場の大半を中国が占めており、重要鉱物であるコバルトやニッケル、マンガンもごく一部の国に偏在し、かつ埋蔵量も限られている。同社のLiSBは、LiBサプライチェーンの中国依存脱却を可能にし、かつ重要鉱物の供給不安リスクを解消することができる。
顧客・競合・パートナー
- 競合:米スタートアップLyten社(2021年 1400回以上のサイクル数達成を発表)、日本のADEKA(2022年 重量エネルギー密度が100Wh/kgなら5000回以上のサイクル数達成を発表)
- パートナー:グローバル自動車OEMと共同開発契約を締結。
※取り扱い注意!こちらの情報の展開は社内限りです※
こちらの記事に対するお問い合わせやMTGの依頼などはこちらのアドレスからお気軽にご連絡ください。
TGVPは米国を中心としたスタートアップ企業とTOPPANグループの連携を推進しております。