Written by Yuhei Yano
今回の注目ベンチャーの紹介はVeradgyです。
Verdagyは水電解による大規模水素製造システムの開発・販売を行っています。
※取り扱い注意!こちらの情報の展開は凸版印刷内のみです※
Verdagy
https://verdagy.com/
サービス/プロダクト概要
・特徴/提供価値
- イオン交換膜を用い食塩水を電気分解し苛性ソーダを製造(副産物として塩素、水素が得られる)するChemetsy社から水素製造に特化した事業としてスピンアウト
- 同社の電解装置はアルカリ水電解(AWE)と固体高分子形水電解(PEM)の長所を兼ね備え、低コストで拡張性が高いと言われるAEM(Anion Exchange Membrane)を採用
- AEMはアルカリ触媒(OH-)と炭化水素系のイオン交換膜を用いる。最大のメリットは、アルカリ触媒を用いるため酸性溶解が起きず、膜に触媒や貴金属を用いる必要がないため電解膜の低コスト化を実現できる点である
- また、発生する水素に水がほぼ混入しないため、水素側(カドード側)の気液分離タンクを小型化でき、さらに貯まった水を戻す配管を用意しなくてもよい等、補機もPEM型より簡略化できる(200KW発電装置では2割程度設備投資コスト(CAPEX)が削減できると言われる)
- 一方AEMの課題はPEM型より電力応答性が低いため低電解効率である点である
- 高電流密度で運転すればPEM型に近い電解効率を実現できるが、高電流密度で運転することにより生じるガス、熱、不純物の滞留による膜・電極の劣化が生じやすい
- 結果的にMEAの交換頻度が高まりOPEXが高くなる。またガス混合による安全性の問題も指摘される
- さらに、グリーン水素製造は再生エネルギー使用を前提とするため、エネルギーコストの高い時間帯の生産は極力避け、エネルギーコストの低い時間帯で極力生産する等の対応が求められる。
- 言い換えれば、低電圧時でも高電流密度を出来るだけ維持し、高電圧時では標準運転電流を上回る電流密度で生産量を最大化するといった、広い運転電流密度範囲を実現する電界装置が必要になる
- 上述の課題を解決するために同社は電解セルに関する以下特許を持つ
(1)電解効率を高める独自の触媒(金属または非金属系オキソアニオン)
(2)正極と負極でガスの混ざり合いを防ぐ設計とし、正極と負極の電解質間のpH差を利用し低電圧でも確実に動作するセル
->低電圧でも動作するセル
(3)セルのガスと温度を管理するための独自の気液混合相の循環・ルーティング方法
(4)高電流密度でのセル内の均一な電流分布を可能にし、高電流密度での動作を可能にするセル設計
(5)膜と電極の間にギャップを設けた設計。(3)と(4)の用途に加え、ガスと熱の管理を強化できる
->(3)(4)(5)膜・電極の劣化を防ぎつつ高電流密度を実現するセル設計 - 既に2MWまで大手石油会社のPJで実証済み
ビジネスモデル
- 高機能セルを組み込んだ電解装置と補機をセットした大規模水素製造システムとしてプラントオペレーター(例:石油、ガス会社など)等に販売予定(基本的には10年契約)
- また、予知保全システムとプラントオペレーションもシステム販売とセットでサービスパッケージとして提供する
- プラントオペレーター向けに水素製造システムの企画、設計、施工までトータルで請け負う水素製造の受託開発ビジネスも行なう
市場動向
- グリーン水素、特に水電解による製造への注目が高まっているが、コスト(CAPEXとOPEX)が課題
(Cf.現在グリーン水素の製造コストは$6-8/kgと言われ、グレー水素の$0.5-1.7/kg、ブルー水素の$1-2/kgと大きく乖離する)
顧客・競合・パートナー
- 顧客:大手石油メーカー、ガスメーカー等
- 競合:Lhyfe(仏:三井物産が出資)、Versogen(韓国DoosanGroup、Dupon等が出資)
- パートナー:Permascand->セル製造に関する契約
※取り扱い注意!こちらの情報の展開は凸版印刷内のみです※
こちらの記事に対するお問い合わせやMTGの依頼などはこちらのアドレスからお気軽にご連絡ください。
TGVPは米国を中心としたスタートアップ企業とTOPPANグループの連携を推進しております。