Written by Ryo Takei
今回の注目ベンチャーの紹介はStarcloud(旧社名 Lumen Orbit)です。
Starcloudは、メガワット規模の分散型データセンターを宇宙に構築することを目指すスペーステック企業です。
※取り扱い注意!こちらの情報の展開は社内限りです※
Starcloud
https://www.starcloud.com/
サービス/プロダクト概要
- 宇宙空間の超低軌道VLEO(高度約315キロ)上にギガワット容量まで拡張可能な分散型データセンターネットワークの構築を目指しています。
出所:Starcloud Webサイト
特徴・提供価値
- 宇宙空間にデータセンターを設置するメリットとして大きく3つがあげられる。
- 豊富な太陽エネルギー:宇宙空間では安価な太陽エネルギーを24時間制限なく使用できる。同社のデータセンターは個々に独立したポッドで構成され、宇宙空間の大型ソーラーパネルにクラスターとして取り付けられる。
- 冷却:データセンターは大量のデータを高速処理するため、消費電力や発熱量が増大し、それ自体が高温となる。通常はこれを冷やし続けるための空調設備にも電力が必要となるため、データセンター全体での消費電力量はさらに増えてしまう。一方、宇宙空間の温度は非常に低く、実行周囲温度は約-270℃である。そのため、パッシブ冷却(熱を自然に宇宙空間へ逃がす技術)により、地上での設置で問題となる冷却の課題も解決できる。
- 無限に拡張可能:地上では土地や電力供給をはじめとする物理的な制約に加え、規制や周辺環境への影響など様々な制約が存在する。宇宙のデータセンターはこのような制約がなく無制限に、衛星の打ち上げによって迅速に拡張できる。
- 同社は、Nvidiaの地上用GPUを搭載したデモ用衛星をSpaceXのFalcon9を利用して2025年5月に打ち上げる予定。翌年には、さらに100倍の性能を持つ別のテスト衛星を打ち上げる予定となっている。
出所:Starcloud Webサイト
ビジネスモデル
- 衛星の打上げ価格は低減傾向にあり、それに伴い宇宙へのアクセスが拡大している。同社は打上げコストの低下を利用して、宇宙の豊富な太陽エネルギーとパッシブ冷却を活用し、無制限にスケールアップできる軌道上のデータセンターを急速に拡大させる計画である。
- 宇宙のデータセンターをサービスプロバイダーとして、NvidiaのH100(GPU)のコンピューティング時間に相当するものを1GPUあたり1時間あたりの価格でクライアントへ提供する。
なぜ今この会社なのか
- AIインフラに対するエネルギー需要が急増しており、アメリカではAIの利用拡大でデータセンターの電力使用量は、2023年から2030年の間におよそ3倍になるとの予測もある。例えば2027年からは最大のLLMをトレーニングするためにギガワット規模クラスターが必要とされ、これは米国最大の発電所の発電量を超える規模となっている。同社のデータセンターは、地上で直面する土地や電力制限、環境影響の問題を回避し、AI開発の規模拡大に貢献する。
顧客・競合・パートナー
- 競合:月面にデータセンター構築を目指す米スタートアップLonestar社、水中データセンターの構築を目指す米スタートアップNetworkOcean社など
- パートナー:NvidiaのInception Programを通じて提携、彼らのGPUが同社の衛星に搭載される。
※取り扱い注意!こちらの情報の展開は社内限りです※
こちらの記事に対するお問い合わせやMTGの依頼などはこちらのアドレスからお気軽にご連絡ください。
info@tgvp.vcTGVPは米国を中心としたスタートアップ企業とTOPPANグループの連携を推進しております。