Written by Ryo Takei
今回の注目ベンチャーの紹介はsavorです。
savorは、二酸化炭素由来の炭化水素から化学プロセスで生産する代替脂肪を開発しています。
※取り扱い注意!こちらの情報の展開は社内限りです※
savor
https://www.savor.it/
サービス/プロダクト概要
- 二酸化炭素を原料とした炭化水素(パラフィン)を酸化させて得られる脂肪酸を使った代替バター試作品を開発
特徴・提供価値
- 同社は、原料として二酸化炭素、もしくは化石燃料の蒸留や精製の工程で得られる直鎖状炭化水素(パラフィン)を酸化させて脂肪酸に変換し、これをグリセロール(グリセリン)とエステル化反応させることで脂質分子を合成する。炭素鎖の長さにより融点の異なる脂質分子を組み合わせ、水や塩、香料、色素を配合し代替バターを製造する。
- 二酸化炭素由来のパラフィンは、合成燃料(e-fuel)の製造プロセスで入手することができる。クリーン水素と回収CO2により製造される合成ガス(H2+CO)からFT(フィッシャー・トロプシュ)合成でパラフィンを得ることができ、同社はパートナー企業より二酸化炭素由来のパラフィンを購入する。ただし、クリーン水素と回収CO2から作られるパラフィンのみを原料に使用した場合、コストが高くなるため、現在は天然ガスなどの化石燃料由来のパラフィンも組み合わせている。
- パラフィンから脂質を合成する主要なプロセスは、炭化水素末端の酸化とエステル化のみで、すでに他の産業で採用されている熱化学プロセスである。そのため複雑なシステムや希金属触媒等を必要としない。
- 同社は代替バターの製品化から、ミルク、アイスクリーム、チーズなどの開発へ拡大する計画で、さらに食品だけでなく化粧品なども視野に入れている。
- デモビデオでは、ビル・ゲイツ氏がsavorのバターや同社の油を使ったフライドポテト、アイスクリームなどを試食している様子を紹介している。
ビジネスモデル
- 二酸化炭素由来、および化石燃料由来のパラフィンを購入し、同社の設備で代替バターをはじめとする代替脂肪を製造、販売
なぜ今この会社なのか
- 畜産には広い土地や多量の水が必要な上、小麦やトウモロコシなどの穀物を飼料にして育てる場合も、その栽培に広大な面積の農地と多量の水が必要となる。また、牛などのゲップにはCO2の約25倍の温室効果があるメタンガスが含まれているため、地球環境への深刻な影響も問題となっている。国連食糧農業機関(FAO)によれば、世界全体の温室効果ガス排出量の中で家畜由来のものは14.5%を占めている。同社のプロセスは、動物性脂肪の生産に伴う多量の温室効果ガス排出を劇的に抑制し、農地も多量の水も使用しない環境フレンドリーな動物性脂肪の提供を可能にする。
顧客・競合・パートナー
- 顧客:プロのシェフやベーカリー、パティスリーとの提携、非動物性食品を製造する食品メーカーへの販売
- 競合:スウェーデンGreen-On社(二酸化炭素を使用した代替脂肪を開発)、米C16 Biosciences社(精密発酵による代替パーム油を開発)
- パートナー:二酸化炭素由来の合成燃料・パラフィン製造業者
※取り扱い注意!こちらの情報の展開は社内限りです※
こちらの記事に対するお問い合わせやMTGの依頼などはこちらのアドレスからお気軽にご連絡ください。
TGVPは米国を中心としたスタートアップ企業とTOPPANグループの連携を推進しております。