注目ベンチャー紹介:Realta Fusion

2024
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Written by Ryo Takei

今回の注目ベンチャーの紹介はRealta Fusionです。
Realta Fusionは、新たな炭素ゼロの熱・電力源として期待されている商用核融合エネルギーシステムを開発しています。

※取り扱い注意!こちらの情報の展開は社内限りです※

Realta Fusion

https://realtafusion.com/

サービス/プロダクト概要

  • コンパクトでスケーラブルなリニア型核融合炉(磁気ミラー型)の構成を活かし、より低い設備投資で新たな炭素ゼロの熱・電力源となる核融合エネルギー発電所を顧客に提供
出所:Realta Fusion Webサイト

特徴・提供価値

  • 核融合エネルギーは、水素の同位体である重水素(D)とトリチウム(T)の核融合反応(D-T反応)を利用したエネルギー技術で、大きな圧力と高い温度において軽い原子核同士が結合することにより膨大なエネルギーを生み出すことができる。
  • 核融合反応を発生させる核融合炉にはいくつかの方式があり、原子核が非常に高いエネルギーで動き回っている高温プラズマの閉じ込め方式によって分類される。代表的な方式にトカマク型、ヘリカル型などがあるが、同社は磁気ミラー型という方式を採用している。
  • 同社の磁気ミラー型核融合炉は配置が直線のため、炉がドーナツ形状であるトカマク型やヘリカル型に比べ整備や保守が容易で、炉の伸長のみでスケール拡大ができる。またトカマク型やヘリカル型の場合、使用する高温超伝導(HTS)磁石の形状・配置が複雑になるが、磁気ミラー型はシンプルな形状でかつ個数も少なくすむため、エンジニアリングリスクやコストを抑えることができる。
  • 磁気ミラー型は核融合エネルギー研究の初期(1980年代ごろ)に重点が置かれていた比較的成熟したコンセプトであったが、同社は超伝導材料(特にHTSマグネット)とプラズマ安定性制御、コンピュータ・シミュレーション技術の近年の進歩に注目し、以前の実験よりもはるかにコンパクトで低コストなシステムの設計が可能となっている。
  • 同社は2024年7月にウィスコンシン大学の研究者と共同で、核融合プラズマ実験(写真)で過去最高の定常磁場の印加に成功したと発表した。同社は17テスラの磁場強度を持つプラズマの形成・保持に成功し、この数値は磁気ミラー型の構成で高温超伝導(HTS)磁石を使用した最初のものとなっている。

出所:Realta Fusion Webサイト

磁気ミラー型の構成:青が高磁場電磁石、マゼンタがプラズマ、白が粒子の軌道

ビジネスモデル

  • 幅広いスケールで動作することが重要な利点である核融合技術の初期アプリケーションとしての採用を目指しており、データセンターなどの小型拠点に産業用熱と電力を供給する小規模発電所をターゲットとしている。

なぜ今この会社なのか

  • 核融合エネルギーは発電の過程においてCO2およびその他の温室効果ガスを一切排出しない、また原理的な危険性が少なく、高レベル放射性廃棄物を生成しないことから、エネルギー問題と地球環境問題を同時に解決する次世代のエネルギーとして期待されている。
  • 米エネルギー省(DOE)は、2024年5月に核融合発電所の設計と研究開発を進める先駆的リーダー8社に4600万ドルの資金提供を行うことを発表し、同社はその1社に選ばれている。これは10年以内に核融合をパイロット規模で実証するという政策実現に向けた取り組みで、マイルストーンベースの核融合開発プログラムを通じて資金提供を受ける。

顧客・競合・パートナー

  • 競合:磁場閉じ込め方式でヘリカル型の国内スタートアップHelical Fusion社や慣性閉じ込め方式(レーザー方式)の米スタートアップBlue Laser Fusion社など
  • パートナー:ウィスコンシン大学マディソン校の物理科学研究所と共同でWHAM(ウィスコンシンHTS軸対称ミラー)と呼ばれる核融合エネルギー装置の建設とテストをおこなっている。

※取り扱い注意!こちらの情報の展開は社内限りです※

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