注目ベンチャー紹介:Mangrove Lithium

2024
8
21

Written by Ryo Takei

今回の注目ベンチャーの紹介はMangrove Lithiumです。
Mangrove Lithiumは、様々なリチウム原料をバッテリーグレードの水酸化リチウムまたは炭酸リチウムへ直接変換できる電気化学的リチウム精製技術を開発しています。

※取り扱い注意!こちらの情報の展開は社内限りです※

Mangrove Lithium

https://www.mangrovelithium.com/

サービス/プロダクト概要

  • 様々な原料から抽出した塩化リチウム(LiCl)または硫酸リチウム(Li2SO4)を直接バッテリーグレードの水酸化リチウム(LiOH)または炭酸リチウム(Li2CO3)に変換することのできるモジュール式で拡張性の高い精製プラットホームを提供

出所:Mangrove Lithium Webサイト

特徴・提供価値

  • 同社の精製プラットホームは、塩水、硬岩、粘土、DLE(直接リチウム抽出法)中間製品、あるいはバッテリーのリサイクル材など多様なリチウム原料に応用でき、直接バッテリーグレード(高純度)のリチウム材料の変換することができる。
  • またこの精製プラットホームはモジュール式で、あらゆる規模に合わせて拡大・縮小できるため、上流のリチウム生産者、バッテリー部材(カソードやアノード)ないしはバッテリーメーカー、バッテリーリサイクル工場の設備と容易に統合・併設できる。つまりリチウムバッテリーのバリューチェーン全体にわたって効率化と材料供給リスクの低減を実現することができる。
  • 同社の精製技術には電気化学的プロセスが用いられ、電解セルはカソードとアノード、カチオン/アニオンイオン交換膜で構成されている(下図)。電解セルは供給される原料のLiClまたはLi2SO4を高純度のLiOHまたはLi2CO3に直接変換する。また副生成物(LiClの場合はHCl、Li2SO4の場合はH2SO4)は上流のリチウム抽出プロセスで再度利用することができる。同社は電解セルの構成や電極の設計・製造、前後工程プロセスの特許を取得済み。
  • EV電池用リチウムイオンバッテリーの原料にはLiOHとLi2CO3の2種類があるが、このうちEV電池の高容量化に適しているのはLiOHである。Li2CO3はLiOHの原料でもあるが、同社の技術は一般的なLi2CO3を経由する変換プロセスを省力することができ、また従来の精製方法における複雑な工程や設備投資も排除することができる。

出所:Mangrove Lithium Webサイト

ビジネスモデル

  • 最初の商業プラントでは、製造設備の所有・運営を同社が行い、リチウムバッテリーのバリューチェーン向けリチウム精製の製造委託サービスを提供する。
  • 将来的に顧客が所有・運営するライセンスモデルへ展開し、同社のアクセスが難しい遠隔地や鉱山などの大規模プロジェクトに対応、生産量に応じた料金を徴収する。

なぜ今この会社なのか

  • 電気自動車(EV)の急速な普及に伴い、高品質な電池用リチウム(LiOHとLi2CO3)の需要が劇的に増加している。予測では、今後リチウムの需要が供給力を上回り、その差が拡大していくとされており、供給不足への対処が求められている。
  • 現在、世界で採掘されているリチウムの大半は中国に運ばれ、中国がリチウム精製工程を寡占する状態である。LiOHの輸出量の半数超を中国が握っており、米国や日本にとって中国への過度な依存がサプライチェーン上の課題となっている(下図)。同社の精製プラットホームは、リチウム精製の中国依存を脱却し、より強固なリチウムサプライチェーン構築を可能にする。

出所:Mangrove Lithium Webサイト

顧客・競合・パートナー

  • 顧客:上流のリチウム生産者、バッテリーメーカー、リチウムイオン電池のリサイクル業者(バッテリーリサイクルスタートアップRedwood Materials社など)
  • 競合:電気化学的プロセスを利用するリチウム精製スタートアップElectraLith社、DLE技術を利用し塩水の処理・精製を行うスタートアップEnergyX

※取り扱い注意!こちらの情報の展開は社内限りです※

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