Written by Yuhei Yano
今回の注目ベンチャーの紹介はJETTI Resourcesです。
JETTIは銅鉱物の精錬を促進する触媒の開発・販売をしています。
今後世界的な銅の供給不足が見込まれる中で、銅の抽出効率を高めつつ環境負荷が小さい同社のような新たな精錬プロセスの開発が求められています。
※取り扱い注意!こちらの情報の展開は凸版印刷内のみです※
JETTI Resources
https://www.jettiresources.com/
サービス/プロダクト概要
- 銅鉱物の精錬を加速する触媒、精錬プロセスの開発・販売
特徴・提供価値
- 硫化銅鉱などの一次硫化物から、産業材料として販売可能な純度の高い銅を精錬するために必要な独自の触媒を開発している
- 具体的には、ヒープリーチング法(*1)で用いられる、侵出溶媒の働きを活性化する独自の触媒(鉄酸化性バクテリアと推測される)とプロセス技術が同社のコアである
- 一般的に、ヒープリーチング法では硫化銅鉱の表面に含有する不活性化層が希硫酸等の溶媒で溶けにくく、銅の抽出を妨げる原因となる
- 同社の独自触媒を溶媒に加えることで、硫化銅鉱に含まれる硫化鉄の酸化還元電位を上げ、溶媒を散布するだけで不活性化層を取り除くことが可能になる
(侵出溶媒がミネラル層まで届き、同社試算によると銅抽出効率が溶媒無しに比べて2-3倍まで高まる) - 同触媒は侵出溶媒の条件 (*2) に影響を与えることなく使用できるため、既存の工程を変える必要性がなく、初期投資、オペレーションコストを削減できる
- また、有害物質を含む溶媒使用量、乾式精錬等と比べてエネルギー使用量を削減でき環境負荷が小さい
- 同社特許はUS,カナダ、チリ、ペルー、メキシコ、日本で登録されており、主に触媒自体の組成、触媒を適用する銅鉱物のタイプ、機能発現、プロセス条件に関するものである
ビジネスモデル
- (1)触媒ライセンス:他社が保有する銅鉱山PJから得られる銅の抽出量に対し、数%のライセンスフィーを得るモデル
- (2)銅鉱山保有:自社または共同で銅鉱山を保有し、銅を販売するモデル
なぜ今この会社なのか
- EVは自動車に電力を供給する銅配線の量が増加することにより、内燃機関自動車より2.5倍の銅が必要と言われる
- 地質学的には銅の資源量は十分であるものの、既存の生産設備や生産量を考えると急速に増えつつある需要を満たすことはできず、今後10年間で恒常的に年間1,000万トン以上の銅供給不足が生じると言われる
- 一方、銅鉱山は認可から建設まで10〜15年かかり、たとえ現在開発中のプロジェクトの許可や建設が早まったとしても、予測される銅の供給不足を補うには十分ではない
- よって、新規鉱山の開拓はもちろんのこと、同社のような銅の抽出効率を上げるクリーンな精錬プロセスの開発が喫緊の課題となっている
顧客・競合・パートナー
- 同社が保有すると推測される技術(鉄酸化性バクテリア触媒)は、日本勢では2010年にチリ国営銅公社とJX金属がバイオシグマ社をJVで設立し、試験操業を行なったとのリリースが見られる
- また、JOGMEC(独エネルギー・金属鉱物資源機構)が現在でも関連する技術開発を継続していると見られる
- 技術原理は長年研究蓄積された分野と考えられるが、同触媒を適用する銅鉱物のタイプ、機能発現、プロセス条件を含め、2019年から実際の銅鉱山PJで適用した総合力が同社の強みと考えられる
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