Written by Ryo Takei
今回の注目ベンチャーの紹介はBanyu Carbonです。
Banyu Carbonは、安価でエネルギー消費も少ないと期待される光化学反応を利用した海洋二酸化炭素除去の技術を開発しています。
※取り扱い注意!こちらの情報の展開は社内限りです※
Banyu Carbon
https://www.banyucarbon.com/
サービス/プロダクト概要
- 光活性化化学物質である光酸(photoacid)を利用して海水中に溶解した二酸化炭素を取り除くプロセスを開発、また創出したカーボンクレジットを販売
特徴・提供価値
- 同社は青色スペクトル光により水素イオン(プロトン H+)の生成を可逆的に制御できる独自の光酸(photoacid)分子を利用した海洋二酸化炭素除去システムを開発している。
- 同社のシステムでは、太陽光を利用して化学物質を活性化しており、汲み上げた海水のタンクへ生成したプロトン H+が流れ込む。海水に溶解している二酸化炭素(CO2)は炭酸(H2CO3)となって、さらに水素イオンが解離した炭酸水素イオン(HCO3-)や炭酸イオン(CO32-)として化学平衡の状態を保っている。プロトン H+が流れ込むと海水は酸性へ傾き、炭酸ソーダのように炭酸ガスが水から泡立つ。システムは発生した二酸化炭素を回収し、プロトン H+を再び光酸へ戻すことができる。最後に二酸化炭素が除去された海水は再び海へ戻される。(下図)
- 海水は大気中の二酸化炭素を自然に吸収・濃縮する役割を果たしており、システムによって炭素が除去された海水は、急速な平衡化(数ヶ月単位)により、大気から同量の二酸化炭素を吸収することができる。
- 同社のシステムの中心となる光酸(photoacid)分子は、一般的な赤色染料に似た構造の有機化合物で単純な出発物質から簡単に合成でき、金属や希少元素、有毒元素は含まれない。この光酸分子を含む溶液は、可視光(青色LED)によって基底状態(赤色)から活性化状態(黄色から透明)へ変化し、可逆的に水素イオンの生成を制御できる。(下図)
- 実験室でのテストでは、同社の光酸は水中の二酸化炭素を94%除去したという。光酸は繰り返し使用できるが、その半減期は10日で、基底状態と活性化状態の間を約14,000回繰り返した後、効果が50%低下する。同社が光酸の寿命を30日に延ばすことができれば、1トンの二酸化炭素を除去するのに必要な光酸の量は0.44kgですむという。
ビジネスモデル
- 二酸化炭素回収により創出したカーボンクレジットの販売
なぜ今この会社なのか
- 海水には大気中の100倍以上の濃度の二酸化炭素が含まれている。そのため、世界的に徐々に普及しつつある大気中の二酸化炭素を直接吸収する方法(DAC)に比べ、海から二酸化炭素を除去する方法は、より効率的でエネルギー消費量の少ない炭素除去の方法として注目されている。
- さらに同社の炭素除去技術は太陽光を利用するため、後述する電気化学プロセスを使用して海水から二酸化炭素を除去する技術・スタートアップと比較し、エネルギー消費量が大幅に少なくてすむと予測されている。
顧客・競合・パートナー
※取り扱い注意!こちらの情報の展開は社内限りです※
こちらの記事に対するお問い合わせやMTGの依頼などはこちらのアドレスからお気軽にご連絡ください。
TGVPは米国を中心としたスタートアップ企業とTOPPANグループの連携を推進しております。