Written by Yuhei Yano
今回の注目ベンチャーの紹介はAdvanoです。
Advanoはシリコンを用いたリチウムイオン電池負極材を開発しています。
シリコンは原子数比で自身の4倍のリチウムを扱うことができることから、グラファイトに代わる負極材料として注目を集めています。
※取り扱い注意!こちらの情報の展開は凸版印刷内のみです※
Advano
https://www.advano.io/
サービス/プロダクト概要
- シリコンを用いたリチウムイオン電池負極材の開発・販売
・特徴/提供価値
- シリコンは原子数比で自信の4倍のリチウムを扱うことができるため、高密度、高容量、高サイクル特性を実現する負極材料として、グラファイトに代わる負極材として注目される
- 一方で、充放電時にシリコン活物質層にリチウムが出入りし合金化する際に、シリコンが4倍程度まで膨張するため(cf.グラファイトは膨張しない)、シリコン材料の機械的破壊とSEI(*1)の膜厚化がおこり、結果的に容量の低下、サイクル寿命の低下を招くことが課題である
- そこで、シリコン膨張を防止するために各種研究開発が行われてきた。大きな方向性として(1)シリコン粒子自体を小型化する方法、(2)シリコンナノワイヤー化がある
- (2)は、ナノワイヤー状にしたシリコンを組み合わせることで表面積を大きく、抵抗を小さくし高速充放電を可能にしつつ、炭素マトリックスと合成することでシリコン膨張を防ぐアプローチである
- 同社は、このアプローチにおいて多孔質炭素マトリックスの内面に複数のワイヤー化したシリコンナノ粒子を合成する技術にコアIPを持つ
- 具体的には、炭素マトリクスの多孔質形状とシリコンナノ粒子の結晶構造を分子レベルで調整することで合成し易い形状とし、メカニカルアロイング(異なる物質を固相のまま衝突/合成させる方法)と呼ばれる低温合成法により結晶同士を低コストで合成する
- 競合で同種技術を持つGroup14社、Sila社は高温蒸着合成が必要な上、シリコンナノワイヤーが外側に膨らまないようSiO2層(シリコンオキサイド)で表面保護が必要であるが、同社は予め歪みを抑えた結晶を合成するため高温蒸着、さらにはSiO層での保護も不要と主張する
(*1)電解液が分解されることによって負極の表面に生じる被膜。このSEI被膜はリチウムイオンを電極中に挿入・脱離をさせる役割を果たしつつ、さらなる電解液の分解を抑制するなどの性能向上に寄与していると考えられる。一方、SEI被膜が薄すぎると電解液の分解反応が生じたり、逆に厚くなりすぎると電気抵抗が高くなったりと、SEI皮膜が電池の寿命や効率に悪影響を及ぼす場合もある。
ビジネスモデル
- 負極部材をセルメーカーやエンドユーザー(e.g.自動車OEMなど)に販売する
市場動向
- EVの付加価値の半分以上がバッテリーが占めると言われる中、現在米国においては、米中摩擦、IRA(インフレ抑制法)によって、バッテリーセルだけでなく電極部材、原料自体も米国の保護技術として指定され、各社技術と供給先の囲い込みが加熱している
- そのような中で、グラファイトに代わるシリコン系負極材は長らく研究開発が行われてきたが、Group14社のように大手企業やVCから多額の出資を集め、ハイエンドLiB向け電極として製品供給に漕ぎ着けるベンチャーが現れ注目を集めている
顧客・競合・パートナー
- 同社は未だシリコン負極材の試作ラインを着工したばかりであるが、米国、中国大手EVメーカー、米国大手家電メーカー等との共同開発を進めている
※取り扱い注意!こちらの情報の展開は凸版印刷内のみです※
こちらの記事に対するお問い合わせやMTGの依頼などはこちらのアドレスからお気軽にご連絡ください。
TGVPは米国を中心としたスタートアップ企業とTOPPANグループの連携を推進しております。